受験のはずが感動体験!長野の人達の温かさ!

それは20年以上前のことですが、大学受験のため、栃木から長野の南伊那まで遠征したことがあります。

栃木にも雪山はございますが、さすがは南アルプスのお膝元、雪の量が違いました。

高速バスから降りると、雪に足を取られる程の積雪と吹雪で、受験日の前日に最寄り駅に着き、明日の受験に備えて前日のうちに大学を下見に行こうとしていたのですが、降雪量が多くバスは運休とのことでした。

これではタクシーも動いていないかもしれない…と思っておりましたが、タクシーの運転手さんは慣れたもので、吹雪の中、大学までの道を走って下さいました。

運転手さんは受験生である私をリラックスさせてあげようと思ったのか、温かなお国なまりのある言葉で、「右を見てみて下さいよ。

南アルプスがずっと連なっているでしょ?

駒ヶ岳に八ヶ岳、聞いたことあるでしょ?

帰りには野沢菜のお漬け物を買っていってな。お父さん、お母さん、喜ぶよ~。」
(あの…吹雪で南アルプスが見えないんですけど…)と右の車窓を見ながら、心の中でツッコミを入れておりましたが、帰りに野沢菜のお漬け物を買うのを忘れないようにしようと思いました。

翌日の受験当日、吹雪は一晩中やまず、バスは運休、前日に泊まった旅館から駅まで歩き、駅から大学までの道を、やむをえずまたタクシーを利用するはめになった私は、偶然にも同じ運転手さんに乗り合わせ、大学まで送って頂きました。

またしても右の車窓の南アルプスの話題になりましたが、やはり受験当日も南アルプスは見えず…。しかし運転手さんの温かいお人柄を感じるお話で、すっかりリラックスさせて頂いた私は(必ず勝って、野沢菜のお漬け物を誇らしく買って帰る…!)と、肝が据わったのでした。

「頑張ってな!おっちゃん応援してるからな!」…運転手さんが最後まで心遣いのある言葉をかけて下さったお陰で思い返すことが出来たのですが、旅館でも、駅でも、大学でも、長野の人達はとても温かかった、遠くから来た私を、とてもやさしく迎えてくれた、と、いつの間にか長野が大好きになった心で、長野に来て出会ったことを反芻しました。

大学に着き、試験が終わる頃には雪がやみ、大学の敷地から、真っ白に雪化粧をした南アルプスの山々が、まぶしい程に輝いて見えました。

試験を終えて校舎周辺から雪山を眺めていると、学生の有志が豚汁を薪の火で作り、待っていてくれました。

のちにそれが私の先輩方になるのですが、そこでも学生はとてもやさしく、温かく私をねぎらってくれました。

観光もしていないのに、長野が大好きになってしまい、その心は、長野の人達の温かいお人柄への感謝の念は、根雪のように胸に残り、大学を卒業した後も、度々訪れてしまいます。